2013年03月17日

《博学の技法》を修行していた

 ボクがブログも更新せず、水面下で何をしていたか。現状報告です。表現の幅を広げるために《博識》の修行をしていました。
 博識。すなわち「博[ひろ]く識[し]る」ということです。

 例えばの話、専門知識を扱ったジャンルものというのは、小説でも漫画でも一定の人気がである、安定感があると思うのですよ。スポコンものとか、グルメものとか、特殊な職業を扱ったものとか。
 最近の例を挙げるなら『JIN』に『信長のシェフ』。『まおゆう』も経済学ものといえるでしょう。
 こうしたジャンルものは、読者も読んでいて専門外の知識を得られるし。知識を持っていないと書けないので、重宝がられるというところがあると思うのですね。

 さてボクはプロットノックや短編回路によって、どんなネタでもプロット化できるようになりました。しかし、ひとつ悩みが生じてしまった。
 『JIN』や『信長のシェフ』というのは、どんな現代人チート知識によって、問題を解決するのだろうか、という面白さがあります。これを《横糸》と仮称しましょう。
 これらの作品は《横糸》に対して、時代のうねりという大きな物語性。つまりは《縦糸》が加わるからこそ、特に面白さを増しているのでは、とボクは考えるわけです。

 もちろん《縦糸》の物語を作るのも、今なら難しくはありません。しかし《縦糸》で起こるイベントに合わせた、《横糸》のネタをどう選べば良いか。そこで問題が起こってしまったのです。簡単にいえば、そのイベントに合った料理をどう選べば良いか。難しいということ。
 選択のためには、一個一個のネタに関して詳細を把握していなければなりません。その上で、広く多くのネタをカバーしていなければならない。いわゆる、生き字引能力が必要となるわけです。生き字引となるには、かなりの勉強時間を必要とする。
 そりゃあ、誰しもが簡単にジャンルものを書けないわけだ。

 生き字引となるには、更に難関があります。
 もしも、あなたが不老不死になったとしましょう。お金の心配もなく、全ての時間を勉強に費やせるとして。どのような芸事も十年やれば、達人になれるといいます。極端な話、十年かけて料理人になった後、更に十年かけて宇宙ロケット開発者になることは、恐らく不可能ではないでしょう。
 けど、そうして順番に五つのジャンルを修めるには、単純計算で五十年を要するということになってしまいます。寿命も所持金にも制約のある、普通の人間には……そんな芸当、無理っす。
 更にね……ボクって暗記力がないんですよ。絶望的なまでに。本気で固有名詞が出てこない。今こうしている間にも、《博識》修行によって得た知識が、トコロテンのように抜け出している。何冊も本を読んだところで、全ての知識を覚えている自信が、《博識》になれる自信がない。
 ボクでなく記憶力に自信がある人であったとしても。もし五つもジャンルを修めたとしたら。きっと五つめには、最初のジャンルで得た知識を忘れていると思うんですよねー。

 小説でジャンルものを書くのに必要なのは、広く事物を集め、なお忘れないこと。また小説で使わなければならないのだから、効率も求められる。生き字引とは、すなわち《博識》だとするならば。ここでボクが注目したのが、博物学でした。
 博物学とは、動物・植物・鉱物・岩石など。自然物に存在するものを収集および分類する学問です。確か、大航海時代には流行っていたけど、今じゃ時代遅れ扱いをされていたはず。
 この博物学を、小説書きに応用できないかと考えたわけです。
 今回、練習がてらに選んだ《博識》のお題は「モンスター」になります。深くやろうとすれば、もちろん限りはないわけですが。広く浅くに、これほど適した勉強課題もないと思ったので。

 というわけでボクの取った方法というのが、有名な梅棹忠夫さんの『知的生産の技術』方式。古めかしくも、京大カードを使っての手書きデータベース作りというわけです。
 使用したのはA6の情報カード。まずはモンスターの名前を書き、五十音順に揃える。そこへ物語化できそうなアイデアのみ抽出して、書き込んでゆきます。情報量が増えたら、通し番号をつけて、二枚目三枚目のカードを作る。最後にカード裏へ、情報がどこから引用したのか。出典元を書いておく。
 以上の作業を何冊もの本に対して行うわけです。

 注意しなければならないことが、ひとつ。
 書き込むアイデアは、あまり詳細なものではいけません。後で、役立つ記述がどこにあるか忘れてしまいます。ならば細部はどうやって思い出すか。
 そこでボクがヒントにしたのが、ボクの手元にある仏典解題事典でした。仏典解題事典とは仏教研究者なら必携の事典ですが。つまりは、どの事典を引けば良いか調べるための事典、仏典の内容に関する事典です。
 全て詳細な記述を抜き出すと、手間がとんでもなく増えてしまう。詳細は結局、本を読み返すのが一番。つまりは、後から本を読み返すヒントだけ、カードに書いてゆけば、物語として利用するには充分なわけです。
 あとは片っ端からプロット化すれば問題解決。千個もやれば、《縦糸》に合った《横糸》も見つかるでしょう。

 実際にボクが作ったカードの内容は、以下のようになります。
【ワイバーン】
●前足はなく、翼のみ。
●毒針の尻尾。
●飛竜。
●由来。wyver=viper(まむし)
●由来。羽ある蛇(winged viper)
●ドラゴンは王の紋章なので代用に考案された。「強い敵意」の意味。
●卵を孵して親友となった少女の話。
《引用元》モンスターコレクション、幻獣事典、幻想世界の住人たち、幻想生物・西洋編

 カードの総数は厚さ四センチ(数えるの、めんどくさい)。輪ゴムで纏めれば自立します(笑)
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 お題「モンスター」程度ならば、二週間も集中して勉強すれば、大方が修得できたはずです。元が狭く浅い知識ですからね。二週間という期間も、《博識》が手にはいると考えれば、かなり短期間で効率的だといえるのではないでしょうか。
 どのみち、結構な根性は必要でしょうがねー。
 というわけで、現在のボクは「モンスターはかせ」ともいえる《博識》を身に付けました。

 と以上のような《博識修行》を行うには、いくつかの下位スキルが必要となります。
 ひとつは、普段からノートをつける習慣。ボクの場合は小説修行をするに当たって、「はまさんノート」と名付けたノートを取っていたのが役立ちました。
 ふたつめは、関連項目に関する基本的な教養。今回「モンスター」の場合ならば、神話学や宗教学やユング心理学や神秘学の知識をボクは元から持っていたので、背景まで理解することができました。
 みっつめ。これが最も重要なのですが。どんなお題からも物語を作り出してしまえる能力。実のところ、ボクが短編百本修行をやっていて、中に妖怪をお題にしたものがあったのは、このための布石だったのです。
 あとは多少なりとも速読を身に付けていると便利かもしれません。

 また近頃は、短編プロットの要領を長編へ落とし込む技法というものを開発しまして。この技法を加えることで、ボクは《マルチジャンル》の特殊スキル獲得を最終目標としています。
 《マルチジャンル》とはつまり、多くのジャンルを描けるようになること。それこそ時代のバラバラな歴史小説を何作も、とっかえひっかえ書けるようになるのが理想です。
 道は……まだまだ遠いなあ。

 今回の修行だけでも、かなり消耗しましたから、しばらくは自重しますけど。次回は実際にやってみた作業を自己反省。更なる効率化を目指そうと思います。


【今回の修行に読んだ本】
●『モンスターコレクション』(富士見書房)安田均
●『モンスター事典』(教養文庫)S・ジャクソン
●『リトルピープル』(アルケミスト双書)ポール・ジョンソン
●『妖精画壇』(岩波新書)水木しげる
●『伝説の英雄とモンスター』(西東社)金光仁三郎
●『幻獣事典』(新星出版社)
●『萌える妖精事典』(ホビージャパン)
●『妖精』(新紀元社)草野巧
●『幻想世界の住人たち』(新紀元社)健部伸明
●『幻想世界の住人たちU』(新紀元社)
●『幻想生物 西洋編』(新紀元社)山北篤
posted by はまさん at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学的(企画・発想)

2011年03月20日

小説技術メモ/眼高手低の解決策

理想が高すぎるから書けなくなる、のではない。
書きたい気持ちが足りないから、書きたくないだけなのだ。

いざという時になったり、書きたくて堪らない状態になれば、
どうやったって書くもんだ。

じゃあ、どうすればその「気持ち」を溜められるのか。
理想を持つのは別に構わないのだけど。
理想を理想のままにしない。
どうやればその理想を自分で実現できるのか。
うま〜く回路を作ってやる必要があったりします。

ちなみにボクの場合はその「理想を実現するための回路」が
「小説技法」だったりするのですが。
どのみち一朝一夕で解決しそうにないのなら、
「書きたいことメモ」を少しずつでも書きためるのも手だろうし。

だから、自分は理想が高すぎるので書けない、
なんて言い訳はしちゃ駄目よ?
posted by はまさん at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学的(企画・発想)

2010年11月17日

小説技法メモ/取材の作法

 最近、漫画でも小説でもですが、歴史モノに興味を持っています。とはいっても実際に歴史モノを書きたいというわけではなくって。
 歴史モノの作家さんは、どうやって資料を集め、活用しているのだろうかという。いわば歴史モノの《作法》に興味が出てきたのです。
 いやだって、歴史モノ作家さんって凄いよ!? 一作品書くだけでも膨大な資料が必要だというのに。時を変え場所を変え、次々に作品を発表しているのですから。

 というわけで現在、知的生産術を修得中のボクなんですが。
 ひとつ、分かったことを。

 来年の自分は何を書きたいのか? 大雑把にで良いから計画を立てて、今の内に取材を開始しておく。そうすれば来年の今頃、ネタに困ることはない。
 いやむしろネタが尽きることなく、次から次へと出てくる人というのは、そうした下準備何年も絶え間なく続けているようだ。

 結果が出せるのは努力ゆえ……かぁー。
posted by はまさん at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学的(企画・発想)

2010年08月18日

小説技術メモ/ナイスアイデアに関して

アイデアが思いついたらメモを取ることで、アイデアはストックされてゆく。ストックされたアイデアは、ネタに困ったとき、いつでも使える。だがアイデアメモの効用とは、それだけではない。

ナイスアイデアを思いついたら、そのとき思考がどう機能していたか? そもそも、なぜそのアイデアを素晴らしいと感じたのか? 「ナイスアイデアを思いついた瞬間の自分」をログとして残すことにより、いつでもナイスアイデアを思いつけるようになる。つまり、発想法の鍛錬ともなるわけだ。

だからナイスアイデアというのは大事なのだけど。そのアイデアに関するアイデア、アイデアに関する技法といった周辺にも注意した方が良いだろう。
posted by はまさん at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学的(企画・発想)

2010年07月26日

小説技術メモ/モチーフ不足

何を書くべきか思いつかない時、
書くべきことが足りない時は、
まずはアイデアを蓄積させる。

そのために充分な発想を行うか、
取材をするのが最も効果的なやり方のようだ。

といま思い知った。
べんきょべんきょ。
posted by はまさん at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学的(企画・発想)