2016年12月10日

感想『公爵令嬢のたしなみ』澪亜

 これは、たまたまなのだが。ボクはチョコレートに関する知識を持っている。だから分かるのだが。
 カカオを発見したからって、即座に商業的大成功! なんて出来るワケねーだろと。上質なチョコレートの製造には、相当な工業力が必要なんだぞ。
 そこんとこ、文明チートやるにしてもナメんなよ、とまず思った。

 ところが物語が更に、少し進んだ途端、転生要素も文明チート要素もなくなってしまう。残ったのは単なる宮廷陰謀モノとしての要素だけだ。
 しかしそうなったと同時に、登場人物たちが活き活きと動き出し、ドラマは面白くなる。

 これはなぜなのか。
 恐らくは、初期コンセプトを絞らずに書き始めたのだろう。それが宮廷モノとしてコンセプトがまとまった瞬間に、作者の書きたいことが明確になり、キャラやドラマガ動き出したのだろう。
 ウケを取るため、大多数に合わせるのは間違った戦略ではない。だからといって、過去作品に引っ張られ過ぎて、自分の書きたいことを絞れてなかったのは、どーよと思う。

 結果的に作品としては良くなったのかもしれないが。ちょっと偶然に頼り過ぎだろ。

http://ncode.syosetu.com/n1337cn/
posted by はまさん at 23:51| Comment(0) | 感想的(小説)

2016年12月08日

感想『蜘蛛ですがなにか』馬場翁

 「ライトノベルで女主人公は流行しない」なんて話、誰が言い出したのやら。この作品は女だよね。まあ男女の前に蜘蛛なんだけど。
 こうした実験めいた作品を好きに書いて、しかも読者に届けられる。これがネット小説の強みだよな。電撃文庫初期の雰囲気を思い出す。

 この作品も最弱でスタートしたのが、最強になってしまった後は別作品になってしまっている。あるある、だね。
 勝てるかどうかのギリギリ感が楽しかったのになあ。

 そして強くなった後の、時系列がもうグチャグチャ。情報や用語の出し方も、作者だけが分かったつもりで、読者が放置されたまま、物語だけが先走っている印象がある。
 恐らく作者さん、生粋のストーリーテラーなのだろう。だからキャラや設定より、ストーリーが先走ってしまう。そして辻褄合わせに苦労する。
 これ……ラストをまとめるのは、かなり苦労するはず。エタらせず、頑張って終わらせてほしいものだ。

http://ncode.syosetu.com/n7975cr/
posted by はまさん at 00:08| Comment(0) | 感想的(小説)

2016年11月02日

2016年11月01日

読了『ゴブリンスレイヤー 1・2』蝸牛くも

 TRPGプレイヤー、特に『ソードワールドRPG』プレイヤーならば、言わずともわかる、そのまんまな世界観。そこに『指輪物語』リスペクトも入り、「そっちの人」なら思わずニヤけずにいられないだろう。
 その上で、ベタを逆手に取った発想という上手さがある。

 TRPGプレイヤーならば、誰しもが考えたことがあるはずの問題がある。RPGのルールにない細部を、小説でどう描くか?
 これが『ゴブリンスレイヤー』という作品の焦点になってくる。

 小説で描かれる世界とは、ルールのない、つまりはリアルな世界であるはずだ。もちろん「戦い方」にもルールがないのが、リアルというもの。
 すると、途端にゴブリンというザコモンスターが恐ろしくキャラが立ち上がってくる。

 パラメーターにないゴブリンの邪悪さに、人々の日常生活は脅かされる。弱いはずのゴブリンに、ゴブリンを恐れる民草。どちらもゲームルールとしては切り捨てられた「細部」だ。
 だが、この細部にこそリアルが存在する。そうした細部を積み重ねた結果が、ゴブリンの恐ろしさであり、英雄としてのゴブリンスレイヤーということになる。

 確かに「ゴブリンスレイヤー」というネタ自体はパロディだ。だからゴブリンスレイヤーは冒険者仲間からは、しばしば笑いものにされる。
 しかし彼らは、まさに「その世界」のリアルの中で生きている存在だ。だから、すぐゴブリンスレイヤーを笑えなくなる。

 これは「俺TUEE」への批評的作品でもあるのだろう。
 この世界には、ごく一部の選ばれた者にのみチートがある。だがゴブリン相手に周到な用意をするゴブリンスレイヤーに、チートの介入する余地はない。彼らはリアルの中で生きていて、異世界から転生した客人などではない。
 そこには最後まで、そこで生き抜かねばならない者の姿がある。

 だからこそゴブリンスレイヤーは、英雄になりうる。これは立派な英雄譚だ。
 素材はパロディなのに、全く見事な料理の腕前といえる。


posted by はまさん at 23:05| Comment(0) | 感想的(小説)