2010年03月07日

描写をバタつかせないためのステップ:中編

前回はこちら

■STEP1:三文のワケ

 まず最初の練習ですが。Mさんによる、要点を捉えた三文がありますね。この順序を、色々と入れ替えてみましょう。入れ替えて、どう内容が変わってくるのかを確認するのが目的です。
 とはいっても、意味が分からないかもしれませんから。触りまではボクがやってみるとしましょう。

 その前に要点の三文を、説明しやすいよう、以下のように略号をつけさせてもらいます。
小樽の夜景は綺麗だ。→→→→《夜景》
港町の光が輝いている。→→→《港町》
海が遠くまで続いている。→→《海》

 そして順番の入れ替えですが……
 例えば、《港町→海》と並ぶと、近くから遠くへ視線が消えてゆくかのような効果が狙えますね。逆に《海→港町》という並び方ならば、視線が遠景から近付いている。と同時に、モチーフのスケールが小さくなって、視野が狭くなったかのような効果があります。

 それから問題なのが《夜景》の置き所です。実は《夜景》は、論説文における「結論」のような機能を果たしています。だから、真ん中へ置くのは難しい。どうしても、始めか、終わりかということになります。
 始めに《夜景》を配置すれば、読者は「どう綺麗なのだろうか」と興味を持ち、サスペンス的な効果が出てくる。対して、終わりに《夜景》を配置すると、描写を読んでいる間ずっと読者は、ここがどこなのだろうか、と興味を抱きながら読むことになる。そして最後に地名が明かされることで、ミステリの効果を期待できるでしょう。
 狭い数文の中ででも、構成技法は使えるのです。

 また《夜景》の使いどころとして更に面白いのが、主観と客観の問題です。
 「夜景が綺麗だ」というのは、客観的な事実ではありません。主観に基づいていた印象による描写です。対して、《港町》や《海》は客観文ということになりますが。だから読者は《夜景》を読むと、焦点子をすぐ傍に感じることになる。
 そこで試しに《海→港町→夜景》という並べ方をしてみましょう。すると、どうなるか。視線が遠くから、近くへ、焦点子に向かって戻ってくることになります。つまりカメラが移動しているかのような効果が得られる。そして最終的に、海や港町を見渡せる場所に、焦点子が立っている。夜景を見渡せる場所だから、焦点子は小高い場所にいるのだと、読者に提示できるわけです。
 と同時に、客観描写から主観描写へと変化することで、読者は段階を踏んで焦点子の存在を知ることができます。つまり焦点子自体が、ミステリの効果を持つのです。
 ……これを応用してですねー、ちょっとしたイタズラです。《海→港町》の間は焦点子を隠して、いわゆる《神の視点》で描写を行う。だがジワジワと主観がにじみ出し、最後に「夜景が綺麗だ」という箇所で、実は焦点子が存在していたと明かされる。いっそのこと、三人称だと思わせておいて、実は一人称だったという文章でも面白いかもしれません。
 かなり高等なテクニックですね!

 と他にも欲しい効果によって、様々な組み合わせ方があるはずです。三文で序破急の構成をつけてみるとかね。ちなみにこの文章を書きながら、ボクは今までの自分では思いも寄らなかった新技法を閃いたりしています。
 これという絶対的な唯一の組み合わせなどはありません。《書き方》とは、書き手の意図と、作品の効果と、読者の読み方によって、生き物のように変わるものです。
 そして自分が真に何を伝えたいか、などは自分にしか分からないもの。ですからMさんが三文で描写を行っても、ボクは採点できなかったのですね。

 たった三文の組み合わせ。されど三文。可能性は無限大に広がっています。いろいろとチャレンジして、ニュアンスの違いを確認してください。
 ……もしかすると、中には「どんな組み合わせでも、結局は同じ文章だろ」とか「こんな細かい違いに拘ったって、意味薄いだろ」なんて思う方もいるかもしれません。ですが「神は細部に宿る」という言葉が正しいとすれば。こうした細かな気遣いこそが、まさしく「神の宿るべき細部」となるのです。
 まずはその、自らの手で細部に神が宿る瞬間、というのを自らの目で経験しましょう。

 さて、これで描写のプロットが出来上がりました。

posted by はまさん at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 文学的(描写)
この記事へのコメント
どもです。

 構造っていうのは、図形の相似関係みたいに、その規模は関係ない。つまりそういうことでしょうか?
 序・破・急の三段構造は、個々の箱の大きさを問わず、ただその仕組みだけをもって機能する、と。
 更にはその構造をどう機能させるか……。内から外、下から上、手前から奥。もしくはそれぞれ逆か。その流れを御することができれば、なんてことのない描写の一つにさえ彩りを添えることも、できる。
 これを技術としてマスターすれば、「あえて使わない」というイレギュラーな使い方とその効果をも制御し使いこなすことができれば……。


 ……応用規模の大きさたるや、絶大ですね。物語の筋書きから描写手順のほぽ全て、などなど。夢が広がりんぐ。


 ……ん? 「個々の箱の大きさ」……?
 こいつを、序破急それぞれでいじってみたら。単なる文章量ではなく、密度や重要度で見たら……?
 あーやばい、思考だけが先走ってます、すみません。くやしいっ……。でも(ry

 では。
Posted by シャログ at 2010年03月11日 21:03
箱の大きさ……スケール技法のことかな?

ちょっとニュアンスは変わってくるかもしれないけれど、恐らくシャログさんは、こんな感じのことを↓悟りとして得られたのかもしれませんね。

http://www.h7.dion.ne.jp/~p-o-v/lecture/hajime-2.htm
Posted by はまさん at 2010年03月14日 23:24
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/86265432
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック