2009年03月14日

ストーリー作成ソフト『StorYBook』を使ってみた

 ずっと『Dramatica』に憧れていました。
 『Dramatica』とは何かと言いますと。つまりはストーリー作成ソフトです。パソコンの質問に答えるだけで、勝手にストーリーを作ってくれるソフトだと考えてください。
 ビートたけしがハリウッドで映画を撮った時の体験談で、恐らくはこの『Dramatica』であろうパソコンソフトの話題が出たことがあります。監督が撮影途中で、こうストーリーを変えたいと思ったら、その場で脚本家がパソコンを使い、全体のつじつまを合わせてしまったと言うのですね。
 また脚本家だけではない。あの大作家スティーブン・キングも『Dramatica』の愛用者なのだそうです。ここまで来たら、小説書きでなくても『Dramatica』への興味がわいて来ようと言うものでしょう。

 ただし『Dramatica』を使いこなすには、作劇法[ドラマツルギー]に関する深い専門知識が必要となってきます。アメリカでなら、大学の脚本学科を卒業しなければならない程度に。
 その上、いまだ『Dramatica』には日本語訳バージョンが発売されていません。ともかく専門用語が難解すぎて、誰も翻訳してくれないのですね。

 そうしたわけで自分はもう『Dramatica』を使うことはないだろうと、諦めていた矢先。日本語対応のストーリー作成ソフトが存在することを知ったのです。しかもフリーで。
 その名も『StorYBook』と言うソフトです。ちなみにボクが『StorYBook』を知るきっかけになったのは、以下の記事です。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/02/24/storybook/index.html

 そうして、さっそくダウンロード。ちょっくら使った見た感想ですが。
 なるほど。この手のプロット作成ソフトまでは使ったことがなかったけど。こんなのかー。むう。……(しばらく長考して)……うーん。自分にはビミョー?

 この『StorYBook』と言うソフト。基本的には、登場人物や舞台などの、物語要素を整理しつつ、同時に構成ができる。そんなデータベース・ソフトだと思えば良いかもしれません。
 そうやって機能だけ見ていると、小説書きに便利そうに思えるかもしれませんが。じゃあ、どうしてボクには、しっくり合わなかったのか。それは個人個人で小説観の違いがあるからでしょう。

 と言うのも小説って、このソフトほどきっちり、登場人物や舞台について管理する必要がありませんからね。いやむしろ、「管理し過ぎてはいけない」ところが、小説にはあるのですよ。
 と言うのも小説とは基本的に、「散文芸術である」と言う定義しかないからなのです。

 例えばですね。モノローグしかない小説だと、舞台など必要ありませんよね。もちろん、モノローグのみの小説など珍しいかもしれませんが。でも、モノローグのみのシーンが存在する小説なら、珍しくありません。
 他にも、小説では様々な文体を取り入れることができます。手紙文、新聞の記事、広告、商品リスト、公文書、などなどなど。

 ならばそうした小説の場合、舞台管理はどうすれば良いのか? 更に言うと、以上の例からすれば、登場人物の存在しない小説だってあるのですから。
 下手をすると逆に『StorYBook』の機能に縛られて、自由に小説が書けなくなる、と言うことになりかねない。ボクはそんな気がしたのです。

 でも、ここでボクは考えた。
 舞台と登場人物をきっちり管理する必要のある物語って……実物を用意しなければならない、演劇か映画と言うことになります。だから、この『StorYBook』って多分、映画や演劇などの脚本を主眼に置いたソフトなのではないでしょうか。
 「物語作成ソフト」であって、「小説作成ソフト」であるとは限らないと思うのですね

 そもそも小説以外の物語。例えば演劇や映画やなど。登場させることの出来る素材[マテリアル]に限りがある。もしくは、わざわざ素材を用意しなくてはならない物語の場合。ストーリー作りよりも、むしろこの「素材の用意」の方が難しい問題となってきます。
 例えば登場人物ひとつとっても。演じている俳優さんがいるのですから。ちょっとストーリーを変えたから、また出演してくれ、と言うわけにもいきません。スケジュール調整から、アポイントメントから、多くの問題が生じるわけです。
 もちろん舞台設定も同じ。小説なら簡単に、どこだって登場させることができます。それこそ、国会議事堂だろうが、南極だろうが、銀河の果てだろうが。でも演劇や映画だと、代わりになるものを用意するか。さもなくば、実際に「そこ」へ行かなくてはならない。

 そう考えるとですね。小説系であるボクは考えもしなかったのですが。「途中でストーリーを変える」と言う行為の恐ろしさが分かってきました。
 いえね。途中でストーリーが変わってくること自体は仕方がないとは思うのですよ。でもそのたびに、きっと調整役の人が東奔西走しなくてはならないのだろうな……と考えるだに恐ろしい。

 だから、これが漫画だとまた『StorYBook』の使い勝手がビミョーになってくるわけですよ。だって漫画だと資料が必要なモチーフでなければ、筆一本で再現できますから。
 あっ、でもゲームのシナリオ作成では便利かもしれません。素材を用意しなくてはいけませんし。ストーリー分岐のあるゲームなら、管理も必要でしょうから。
 あとは水滸伝のように、大勢の登場人物が出てくる小説なら、逆に管理が必要となってくるのでしょうが。

 どのみち、よほど慣れるまでは使いにくいかも。ボクなら多分、舞台や登場人物管理はやらないで、ストーリー管理だけ使うだろうけど。それなら『Story Editor』のような、アウトライン・エディタで充分だろうし。難しいなあ。
 ただ、脚本系ではどうやって情報管理をやっているのか。ソフトをいじっているうちに、何となく分かってくるのが面白かったです。きっとアメリカ文学ってのは、こう言うものなのだろうなー、と言うイメージもできたし。

 そして、ひとつだけ気になる機能がありました。
物語では、本流とは別に「その時、〜では」といった傍流があるが、そのような「Strands」の設定をここでは行う。
(記事より引用)

 この「Strands」と言う機能。恐らくは伏線と、その回収のために使うものなのでしょうが。なるほど。これだけを独立させた機能にしてしまう、と言うのは面白い試みです。
 そこでボクも、この「Stands」機能を執筆作業に取り入れさせてもらうことにしました。
 使うのは『Story Editop』です。このソフトには、キャラクターの設定管理に使う「キャラクター・ノード作成」と言う機能があります。これを「Stands」代わりに使うことにしたのです。
 すると、あら不思議! なかなかに便利そうですよー。伏線の管理が、かなり効率的になってきました。

 まだまだ執筆作業と言うものは効率化できるんだろうなあ。
 ボクの他に使ってみようと言う人がいたら、いろいろと使い方を工夫してみるのも面白いかもしれませんよ。
posted by はまさん at 22:35| Comment(10) | TrackBack(0) | 感想的(執筆ツール)
この記事へのコメント
あなたは、浅く広くタイプの人なのでしょうね。
沢山のソフトを持っていて、どれも使いこなせない。

創作は生き物です。
どんなに優れたストーリー作成ソフトでも、梗概作りにすぎません。
「途中でストーリーを変える」ではなく、「途中でストーリーが変わる」時、その創作に血が通うのではないのでしょうか。

ノシ
Posted by you-ka at 2009年07月04日 17:19
あのー、申し訳ない。あなたが仰るところの「変わる」と「変える」の差がわかりませんでした。
 いまボクは情報学を勉強しているので、ミーム論支持者として。書き手が自身や、過去ログとの対話を繰り返すことにより、情報生成のシステムが自己目的的に変わってくるのなんて、当然じゃないですか。むしろ、プロットから何も変更なく書ける人の方が凄い。かといって別に、書いていて構想から変える必要が生じなかったのなら、無視して途中変更することもないし。自然と変わるのを待たなければ、「血が通っている」とは絶対にいえない、他の書き方は間違っているのかと問われたら、そうとは限らないでしょうからね。
 作者が書きやすく、読者に面白い作品が書けるのならば。変えるのだろうが、変わるのだろうが、どーでも良いんじゃねえですかね? 
 小説とはそこまで不自由なものではないですよ。

 後もうひとつ質問なのですが。「沢山のソフトを持っていて、どれも使いこなせない」と判断するところの根拠が分からない。
 ボクは同じテキスト・エディタを、もう五年以上使っています。他はアイデアのまとめに使っているだけで、それでも3〜4つといったところ。これのどこが「沢山のソフトを持っている」という基準になるのか、分かりません。
 それ以前の問題として、どうしてボクが「沢山持っている」とご存じなのでしょうか? 相手の内心を勝手に推測する、一人称の代弁は文章として正確ではありませんから、注意なさった方がよろしいですよ。小説作法の基本ですね。

 またボクにとって基本の執筆ツールは今でも、紙とペンです。子供用の「じゆうちょう」を未だに愛用すらしています。
 その気になれば、指定された原稿用紙枚数の、最後の行でピタリと作品を終わらせることだって出来ますよ。
 ですがいつまでもチラシの裏を使っていては不便だから、メモ帳を工夫する。原稿用紙では改稿しにくいから、エディタで書く。同じパソコンを使うなら、もっと書きやすくなるよう工夫する。下手だから勉強して、上達する。
 こんなの書き手として向上心を持っている者ならば、ごくごく当然の心理であり行為だと思うのですが。
 それを「広く浅く」だと仰るのなら、ボクは誇りを持って「広く浅く」であろうと思います。自分の考えこそが絶対と信じて疑わず、新たなチャレンジをしなくなる方が、ボクには恐いですから。
 ご指摘、ありがとうございます。

 また最後にひとつだけ。
 当エントリにおいてボクが語っているのは、「小説と比べて、映画は大変だなあ」という内容であって。あるべき理想の執筆なんて話はしていないはずです。
 ぜひ御再読してみてください。
Posted by はまさん at 2009年07月06日 22:54
偉そうな事をカキコして、大変申し訳ありませんでした。
特に、”あなたは、浅く広くタイプの人なのでしょうね。
沢山のソフトを持っていて、どれも使いこなせない。”などとは人様に言える事ではありません。お恥ずかしい限りです。

「変わる」というのは、俗に言う「登場人物が勝手に動き出す」という事を言いたかったのです。

私も色々なアウトラインプロセッサ等を使いました。
しかし、結局、紙とペンですね^^。

自分は主に脚本を書いていますが、「小説も、映画も大変だなあ」と、熟思います。

大変勉強になりました。
どうぞ、気を悪くなされないで下さい。
Posted by you-ka at 2009年07月09日 09:26
了承いたしました。

自分も趣味程度ですが、映画の撮影に参加したことがあります。
そこで身に染みて、配役も舞台も思い通りにならないことは知りました。
小説のように、自由には途中で変えられないのですね。
だから、物語を途中で変えるというのも、良かれ悪しかれなのだと思います。
Posted by はまさん at 2009年07月11日 22:02
どこをどうたどってきたのか、ここにたどりつきました。
ああそうだ。StoryBook をこのパソコンにインストールしようとして検索したのでした。
StoryBookは使っているのですがどうもノリがいまいちです。
Dramatica 初めて知りました。
早速 Dramatica.com を見ています。
たぶん買います、これ。
ありがとうございます。
どうせ英語版も書く予定でしたので。
Dramatica がもし日本語を扱えないのであれば先に英語で書いて日本語版を後にするかも。
Posted by 日枝 at 2012年08月04日 17:13
わたくし、4.0.9のStorybookをインストールしました。近いうち、Pro版を買う予定です。
しかし、使い方がよくわかりません。
オフィシャルサイトに載ってるヘルプも全部、Japaneseで読みましたが実際の操作をするには不充分です。
はまさんはどうやって、使い方を覚えましたでしょうか。
Posted by セイう at 2012年11月02日 12:19
セイラさんへ。
いやー、正直ほとんど使いこなせませんでした。
御期待に添えず申し訳ない。
Posted by はまさん at 2012年11月06日 23:38
TRPGの作成に使えそうです。
紹介のほどありがとうございました。
Posted by みやぽん at 2013年01月29日 16:56
なるほどTRPGに……。
Posted by はまさん at 2013年02月03日 00:07
はじめまして。
最近、dramatica pro を米アマゾンで買いました(シッピング代込みで125ドルでした。※本体価格が112ドルです)。
今、試行錯誤しながら使ってます。
だんだん、使い方やコツが分かってきました。
使ってみて楽しいです。
今後もドラマティカを楽しんでまいります。
Posted by 古謝 哲也 at 2015年05月05日 11:46
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